「……“弥生”はな、もうずっと動かれへんかってん」
「…………え」
「大学卒業してからすぐ、事故に遭ってなあ」
「…………。」
「歩かれへんなって、神経もやられたらしくてな。動くこともできへんかったんやて」
「……そのことを、未来は」
「知らんかったはずやで。何も言うてへんかったやろ」
弥生さんが事故に遭ったのは、3年前くらいになるはずだ。
3年前ってなると、あたしはまだ未来と出会っては居ない頃だけど、でも今の今まで弥生さんが亡くなっていたことを未来は知らなかったわけで。
つまり、未来はなんにも知らされていなかったのか。
弥生さんが事故に遭ったことも、動けなくなっていたことも。
「……どうして教えなかったんですか」
「“弥生”が言うたんやて。“教えるな”って」
夕日が雲に隠れた。
「未来を心配させたくなかったーって、聞いたわ」
「……それは」
「違う。……って、言いたいんやろう、キョウちゃん」
「…………。」
「ウチもそう思う。結果的に未来を一番傷つける結果になったわけやし」
「けど」と。
「せやけどな……弥生は、」
弥生さんのフリをした、アンドロイドの彼女は声を絞り出す。
「……弥生は、絶対に、治るって信じて、せやからそう言ったんやで……」


