弥生さんは少し考えてから、首を横に振って煙草をポケットに戻した。
それから腕を組むように両手で交互の腕を掴む。
首を少し傾けると、前下がりの髪の毛が頬にかかった。
「……“弥生”なら何言われても、誰かとこうして話す時に、煙草は吸わへんと思うねん」
ニコリと笑う。
夕日に照らされる弥生さんの姿は、それでもアンドロイドには見えなかった。
「……あ、やっぱ未来から聞いてんねや」
「…………。え」
「ウチがアンドロイドやって」
「…………聞きました。」
「キョウちゃんはそれ、信じたんやなあ」
「えぇ、まあ。未来があんな感じだったし、嘘ではないだろうと」
「……そうかあ」
弥生さんはふっと天を仰ぐ。
梅雨が明けきらない空に、雲がないはずはなく。
「……ホンマはウチ、作られるはずちゃうかったんやけどな」
住宅街はとても静かだ。
「“弥生”が、何が何でも作って欲しいっちゅーねんて」
「……弥生さんが」
「うん」と、彼女はうなずく。


