現在あたしと春人が居る場所、保健室。
どうやらこの阿呆な我が後輩は勉強を頑張りすぎて知恵熱的なものを発病したらしい。
知恵熱っていうのはそもそも小さい子供がなるもので高校生がなるようなものではないと聞いたことがあるんだけどまあ春人だからしょうがない。
あたしは春人が横になっているベッドの脇に立って腕を組む。
「昨日徹夜とかしたなら今日はノアに来てもらえばよかったのに。」
「ノアもそう言ってくれたんですけど……大丈夫かなあと思って……」
「お前は15年間自分と付き合ってきているというのにまだ自分の体調が把握できないのか。」
「す、すみません……熱がどのくらいあるとかはすぐにわかるようになっているんですけど……」
「おかげであたしにもその能力が身に着いたよありがとううれしくない。」
「あらあら、それなら体温計は必要ないかしらねえ〜」
突然背後から声が聞こえたので振り向くと、保健室担当の手嶋先生が久しぶりの登場をしていらっしゃった。
相変わらずのまったり口調でこちらの睡魔をラスボス急に育て上げている。超眠い。
手嶋先生はカーテンを潜ってこちらに歩み寄り、体温計を取り出す。
「はい、一応これで測っておいてね〜」
「わ、わかりました……」
「37度を超えてたら、強制的に帰らせますって言ってたわよ〜」
「…………。え誰がです?」
あたしが尋ねると、手嶋先生は「うふふ〜」と笑ってから手招き。
クエスチョンマークが脳内から消えないまま、その手招きにほいほいついて行く。
カーテンから出て、手嶋先生が指し示す窓の方へと顔を向ける。
そこには。
「…………。ノア?」
窓枠に腰掛けて外を眺めている見慣れた横顔があった。
何故か私服に眼鏡である。どうでもいいけど黒縁だ。