春人が寝ているベッド脇の椅子に座って、あたしは小さくため息をつく。
そんなあたしに、人の名前を間違えまくる日本代表・手嶋先生は。
「えーっと…あなたは、たしか2年生の……」
「はい」
「……京都ちゃんね~」
ビビった。
これはビビった。
“キョウコ”とか“キョウ”ちゃんとかならわかる。
あたしも自分の名前がそんな風に呼ばれてしまう字だと理解しているつもりだ。
まあ“キョウコ”は未来たちがワザと言ってるあだ名だけど。
けど京都(これ)はない。
京っていう本名の後に何もついていないわけであって、ちょ、ホント、どうやって間違えたんですか先生教えて欲しいですええとても。
とは言わないけど。
「……いえ、京です。朝倉京」
「あ、京ちゃんね~」
「そうです」
「ごめんなさいね~。それでね、どうする?教室戻った方が…」
そう、先生が口にした直後。
あたしの制服の裾が、クイッと引っ張られた。


