って、こういう時でさえあたしの思考回路はいつも通りだ。
なさけない。
「……ミャーコ」と、ノアがあたしを呼ぶ。
あたしはいつもみたいに、「なによ」と答えようとして、ふと思った。
「……春人?」
「……ハルがなに」
「今あたしの目の前に居るのって、春人じゃないよね」
「…ミャーコ、どうしたの」
「わざわざあたしのこと迎えに来るとかノアらしくない」
「あんた喧嘩売ってんの。」
抑揚のない冷淡な言い方で、我に返る。
今、あたしの目の前に居るのは、間違いなく、ノアだ。
春人には、こんな抑揚のない言い方は出来ない。
我に返ると、たった今の自分の言動がバカらしく思えてきて、少しどもる。
「や、ごめん。なんかそう考えると、怖いなって今、思って」
“怖い”って言う単語が、無意識に出てきた。
怖いって何。怖いって、何が。
何が怖いって、いうんだ、自分。
黙り込んだあたしの様子を、ノアがどう受け取ったのかはわからない。
ノアの声には感情がなくて。でも、
「……俺は、ノアだよ」
そう言った時のノアの声には、少しだけ、色があるような気がした。


