充電終わったらキスしよう





あたしが用件を口にすると、ノアは『ちょっと待って。』と言ってから、立ち上がるか何か、とにかく動作を行ったはず。

スピーカーから聞こえる物音で、どうやらノアは自分の部屋に居たらしく、部屋のドアが開いて場所を移動したことがわかった。

移動した場所は隣の部屋。つまり春人の部屋だ。

少ししてから2人の話し声が聞こえてきたから間違いない。


『…ハル、ミャーコが今からうちに来たいんだって。』

『……え、キョウちゃん先輩が?』

『来てもいいかって。』

『全然いいよ!あ、でも俺今風邪引いてるからうつしちゃうかも……!』

「うつらねえよ。」

『…え、ミャーコなに。』


あたしの声が聞こえたのか、ノアが携帯越しに話しかけてくる。

あたしはそれに答える。


「行ってもいいんだよね?じゃあ今から行く。あとあたしはお前の風邪などに負けるようなヤワじゃねえからって春人に言っといて。じゃ。」


一方的に言い捨ててから、携帯を閉じてポケットに入れる。

病院の出入り口下から見上げた空は相も変わらず真っ黒だ。というのは言いすぎで、実は灰色だ。

ここに来る途中に捨てたビニール傘が同じところに落ちたままなら、それを拾って行こうと思いながら、あたしは再び土砂降りの中へと飛び出す。

こんだけずぶ濡れになりまくってたら、さすがにあたしも風邪引くかなーとは思ったものの、引き返すって言う道を知らないあたしはそのまま走って桜井家へと向かうのだ。


途中で捨てたビニール傘は、もうどこにもなかった。