「……いったー…」
投げつけられた鞄を掴んで、未来は顔を押さえて呻く。
手の隙間から覗いた視線は、あたしを刺す勢いで睨んでいた。
「…人の顔に鞄投げつけるとか最低」
「今のお前には言われたくねえよ」
未来だって、あたしに最低なことした。
わかってないんだろ、お前は。
背中を向けられたまま帰れって言われることが、どんだけ傷つくのか。
「…ついさっきまでさ、あたし考えてたんだよ。未来って常にうざいから、なんかあった時くらいは静かになんのかなーってさ、考えてたんだよ」
「へえ、そう」
「まったく違ったね、真逆だった。なんかあった時の方がクソうざかった」
「あっそうよかったね」
「なんかあった時くらい、素直に落ち込んでみたらどうなの、強がったりするのやめたらどうなの」
「…そういうことをね、アンタに言われると無性にムカつくのよ」
「なら、誰ならいいんだよ」
「あたしとおんなじように、強がってないと倒れそうになる人になら、言われてもいいかもね」
「なに、あたしは違うって言うの」
「違うじゃん、バカ?キョウちゃんはさあ、悩みとかあっても自分で解決して乗り越えられるでしょ。ひとりでも平気でしょ。あたしはね、キョウちゃんとは違うの、真逆なの。キョウちゃんみたいに一人でも立ってられるような強い人間じゃないのッ!」
「――じゃあ、寄り掛かればいいだろ」
当然のように出てきた言葉は、どこにも引っ掛かることなく。
ごく自然に、あたしの喉から流れ、声になった。


