「……あんたバカじゃないの。」
あたしの投げたその言葉は、未来の背中に跳ね返って消えた。
下を見つめたまま、未来は小さく笑う。
「…バカだよ、あたしは。キョウちゃんより数倍はバカだよ」
「知ってる。あたしもバカだけど、でも今のお前よりはバカじゃないよ」
「なに、アンタ喧嘩売ってんの?帰ってって言ってるでしょ」
「できるかって話だよ」
「物わかり悪いねキョウちゃん」
未来が勢いよく振り返る。
舞う髪の毛と共に、涙の雫が踊り場を舞った。
「――帰れっつってんでしょッ!!」
思わず投げてた。
抱えていた未来の鞄を、未来の泣き顔に思いっきり投げつけてた。
ムカついた。心底ムカついた。
泣きたいのはこっちだって感じだった。あたしはそれくらいムカついてた。
「……ンなことできるかっつってんだろ」
自分で吐き出した声は、自分のものとは思えないくらい低かった。
本気の本気で怒ったら、あたしはこういう声になるのか。
知らなかったよ、だってここまで怒ったことってなかったから。
つまりは、今。
あたしは人生初のキレるってヤツを、未来に対して使っているのだ。


