途中まで傘をさしていたけど邪魔だったから投げ捨てた。

どうせ土砂降りだから意味ないし、傘もコンビニで買ったビニール傘だったから持って帰るのも億劫だった。

捨てるのは悪いことだって理解してるけど、でも今はそれどころじゃない。

わかってる。ごめんあとで拾うから。


あたしは携帯を取り出して、久しく使っていなかった携帯番号を呼び出した。

そういえばこの携帯は防水じゃなかったな、なんて思ったのもほんの一瞬。


『……はいはい?』

「泉?泉だよな?携番変わってないよなクソ兄貴?」

『はいはい俺はアナタのお兄様ですよー。で、どしたー?』

「弥生さんが倒れたってマジ?」

『あーマジマジ。えーなに、学校(そっち)連絡行ったんだ?うわこういう時だけ仕事早ェー』

「弥生さんどっか運ばれた?病院とか」

『ってーかなんでミヤコが弥生のこと聞いてくるんだよー』

「うるせえ黙って質問に答えろ黙れってそういう黙れじゃねーから質問には答えろ。」

『はいはい。で、えーっと、病院運ばれたよー』

「それどこ?」

『街の一番デッカイ病院ー』

「わかったどーもアリガトウ。」


それだけ言ってから、あたしは携帯を閉じて制服のポケットに突っ込んだ。

電話の向こうのクソ兄貴は通常運転だったから若干イラッときたけどうちの兄貴ってのはそういうヤツだから気にしたら負けだ。

ってか街の一番デッカイ病院ってどこだっけ。あたし病院とかホント行ったことないからわかんないんだけどえどうしよう道聞けばよかったクッソしくったあたしとしたことが。

タクシーとか拾って行こうかとも考えたけどそういえば今日金持ってねーやってことに気付いてあたしは咄嗟に横を通りかかった見知らぬ誰かさんに道を聞いた。