それは未来さんも思っていたことらしく、頬杖をついて笑う。


「なんていうか、ウチのクラスって特進のクセにバカばっかだよねえ」

「だがそこがいい。」

「たぶんウチのクラスは海辺で夕日に向かって走れって言われたら全力で走っちゃうと思うのよあたし」

「同意せざるを得ない。」

「で、みんなが走って行く後ろ姿をぽつんと眺めるキョウちゃんの姿が思い浮かぶわ」

「えなんであたしハブられてんの。」


「ハブってんじゃなくてキョウちゃんはそうじゃなきゃダメなのよ」「いやあたしも走らせろよ。頼むから。」とかいう会話をしていると、ガラッと教室のドアが開いた。

どうやらスーさんが戻って来たらしい。

みんな席から立って自由気ままに遊んでいたので、こりゃスーさん怒るだろうなと思っていたあたしだったのだが、しかし。


「……浜田」


教室のドアを開けた格好のまま、スーさんは何故か未来を呼んだ。

呼ばれた未来は、あたしを一度見つめて、それから後ろ、すなわちスーさんの方へと顔を向けた。


「はい?」

「…ちょっと」


手招きとそれだけを言って、スーさんはドアの向こうへと姿を消す。

未来はもう一度あたしへと顔を向ける。その顔は意味が分からないという様子だった。