「…………。」
「…………。」
「……という夢を見たんですよね!」
「オーケーまかせろ歯ァ食いしばれ。」
右手に拳を作ろうとしたあたしに、春人は慌てた様子で「嘘ですごめんなさい!」と一歩後退。
大丈夫、後輩殴ったりしないから。
脅すけど。
そんな脅しに引っ掛かった春人は、肩を竦めながらも首を横に振る。
「ち、違くてっ、ホント俺知らないですからっ!」
なんだと。
「じゃあ、あたしが上着貸したのは誰よ」
「いや、俺に聞かれても……」
「だってアレ絶対あんただった」
「そんな……っ、あっ」
一瞬、大きめの瞳を更に丸くした春人が、小さな声を上げた。
何かを思い出したように。
まさかお前、「俺……実は二重人格なんだ」とかいう厨二病台詞言うんじゃねぇだろうな、ごめんちょっと聞きたい。
とか思って、問いただそうとした、のだがしかし。


