そしたらまた、保健室は雨が地面を叩く音だけに支配される。
その支配下で、ノアが微かにあたしを呼んだ。
「……ミャーコ」
「…なによ」
「あのさ、」
「うん」
「充電終わったら……」
“もう少し、こうしてて”
雨音の中に、消え入りそうな、ノアの声。
だけどあたしは、おかしなくらいにちゃんと聞いてた。
聞こえてないと思ってたんなら、大間違い。
淡いグリーンから視線を落とし、ごく自然に瞼を閉じた。
「……うん、そうしようか」
鼓膜を揺らす、静かな雨音が心地良いから。
なんて、たぶんそれは、言い訳だ。
*****
学校を出る頃には、この天気のせいもあって外はだいぶ暗くなっていた。
あたしの傘は黒いので、その傘の下に居るとなおさら暗いような気がしてくる。
隣で傘を持ってくださっているノアさんは大変呆れた顔をしておられますがどういうことなんでしょうね。


