あたしは後ろについていた手を、少しだけ横にずらした。
コツっと、ノアの手にあたしの手がぶつかる。
ノアはそれをどうするわけでもなく、あたしもまた、どうするわけでもなく。
「……手、まだ冷たいね」
雨音だけの空間に、あたしは小さく声を発した。
「……半分も終わってないし」
ノアの声も囁き程度だ。
「…ホント時間かかる」
「嫌なら帰れば」
「…………」
「…………」
「……雨」
「……ん?」
「雨、降ってるから。傘持ってないでしょ」
「うん」
「だから待ってあげてんの」
なんだそれ。
と、あたしは自分が口にした言葉の意味をよくわからないで居た。
ノアは少しの間を開けて、「……あっそ」と、投げやりのような、そうでもないような、真ん中くらいの声色でそう言った。


