充電終わったらキスしよう





ドアの閉まる音を背中で聞いてから、あたしは鞄を肩にかけなおしつつ一番奥のベッドへと足を向けた。

淡いグリーンのカーテンを右手で退けると、ベッドのすぐ側にある窓を開け、そこに頬杖をついて外を眺めるノアの姿があった。

まあ姿の話をすると正確には春人なんだけどいやでも中身ノアだからやっぱり今ここに居るのはノアなんですってすげぇややこしいこと言っちゃったねごめんね黙ろうね。


雨の日くらいもうちょっと憂鬱っていうか物静かな思考回路にならないモンかね自分。


「……ノア」


カーテンの内側に入りながら、外へと視線を向けたままの華奢な背中に声を掛ける。

ノアはゆっくりと振り向いた。


「……早かったね」

「ちょうどHR終わったとこだったし。」

「ふうん」

「ってか全然平気そうじゃん。充電すんの?」


ベッドの端に鞄を置いて、その横に腰を下ろす。

ノアと同じ目線になる。開け放った窓の向こうは灰色だ。


「……した方がいいかなと思って、充電」

「…そっか。まあ、あんたがそう言うならしますけど。はい、背中こっち」


鞄の中から充電を取り出して、一番近いコンセントに装備させていただく。