「……ついにやってきたねこの季節が…」

「…………。」

「あたしはこの季節をずっと、そうずっと待っていたのよ…」

「…………。」

「キョウちゃんの髪の毛くりんくりん!」

「おいやめろ。」


背後から髪の毛をわっしと掴まれつつあたしはスパッとそう言い切る。

背後であたしの髪の毛を掴んでいる未来さんは「断る!」と言い切った。


窓の外は薄暗く、どんよりと重たい雲が街を覆っている。

その雲から降ってくる雨は、気分をいっそう沈ませてる気がする。

季節は梅雨真っ只中。

この季節、あたしの髪の毛は湿気のせいでゆるいウェーブがかかり、パーマをかけたように見えるのだ。

私的には大変迷惑な話なのだがしかし未来さんにとっては愉快極まりない季節のようで。


「やっとこれを使う日が来たようだな…」

「なんぞ。」

「見て!キョウちゃん!真っ赤なリボン!」

「昭和に帰れ。」


目の前で揺れる真っ赤なリボンをのれんのように手で退けながらあたしはため息。

あたしにこのリボンが似合うとは到底思えないしつける気も毛頭ない。

未来さんもそれをわかった上で持ってきているのだ。

意味がわからない。