「……そんなに嬉しいのかい。」
身を引きつつそう尋ねると、未来は「うん!」と大きくうなずいた。
「そりゃー大好きなお姉ちゃんに似てるって言われたら嬉しいでしょー!憧れだしー」
『未来はウチのこと怖いとかウザいって、思てるはずやで』
弥生さんが言った言葉を、何故だかあたしは脳内で反芻していた。
弥生さん、未来はあなたのことが大好きで、しかも憧れらしいですよ。
いつか気づいてあげて下さいな。
未来はたぶん、自分から、弥生さんに言わないと思うから。
「……そか。」
あたしは小さく笑いながら、それだけ口にした。
家に帰りついてから、リビングでくつろいでいた泉に弥生さんのことを聞いてみた。
泉は「あー」と短く唸ってから、
「覚えてるよー美人だったしー凶暴だったしー」
「……そうか。」
最後の一言は余計だと思ったがしかし事実だったからなんとも言えない。
あたしは今の弥生さんが変な関西弁使ってることと、未来のお姉さんだったことを伝え、あと。
「…お前に支えてもらったって、言ってた。」
言ってもいいのかわからなかったけど、どうしても伝えておきたかった、みたいな。
泉はソファに背を預け、微かに瞼を伏せた。
「……そう」と、小さな相づちを打った泉は、少しだけあたしの知らない顔をしてた。