「……あのさ、春人」
「……ふぁい…」
「やっぱりムリしないでさ、手嶋先生に車乗せてもらった方がいいんじゃないか」
「……嫌です…乗りません」
「あんまりムリして、また体調崩したらどうするの。最近調子よかったのに」
「……そう、ですけど…」
でも、と。
「…やっぱり、ちゃんと歩きたくて」
真剣、というか、決意、というか。
なんとなくそんな風な声色で、春人はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…俺、小さい頃から、遠足とかそういう行事は、いっつも参加できなくて」
「……うん」
「中学でも、休みがちだったし…体育祭はいっつも見学だったし…なんとか遠足に参加しても、途中ですぐ歩けなくなるし…」
「……うん」
「だから高校ではって、思って……でも結局、同じようなことになってるんですけど…でも前よりは、歩けるようになってるから」
「…まあ、そうだね」
「ちゃんと最後まで歩けたら、ちょっとは自信つくかなって…思ってて、ですね」
「……ふむ」
「その、キョウちゃん先輩は先に行ってください。俺大丈夫ですから、ちゃんと歩きます」
「断る。」


