充電終わったらキスしよう





あたしは大きく息を吸って、酸素不足になりかけた肺へ酸素を送り込む。

嗚呼……空気が美味しい。


なんとか絞殺されずに済んだあたしは、首を擦りながら後ろの方へと顔を向ける。

そこにあるのは見慣れない顔ばかりで、あたしが中学から知ってる“お前は女子か”的なあの顔はどこにも見当たらない。

まだまだ後ろの方を歩いているに違いない。


そういえば説明し忘れてたけど、今日は遠足なのだ。

どっかの広い草原みたいなところへ歩いて行くらしい遠足。

列の順番は3年、2年、1年になっているので、あたしは後ろが気になってしょうがない。

だって遠足に春人が参加しているから。

ノアではない。今日は正真正銘、春人が。

風邪が治ったから、ここ数日は春人がきちんと学校へ行っていた。

そんなに倒れることもなく平穏な日々を送っていたので、あたしも学校でぐっすり眠rいやなんでもない。

昨日、遠足について作戦会議(とも言えない何か)をするために桜井家にお邪魔したら、数日振りにノアと顔を合わせた。

『ちょっと振り、ノア』と声をかけてみたら『…なんであんたがここに居んの』とものすごく嫌そうな顔をされたので持っていた鞄をぶん投げてさしあげた次第であります。

やっぱりノアはノアだった。

あの日のノアはただの幻想だったんじゃないかと本気で思ってしまう程度にはいつも通りだった。

ちょっとは変わってないだろうかと淡い期待を抱いていた数分前までの自分に『一昨日来やがれ』と言ってやりたい。