だってなんか、ノアが素直だ…。
普段ならありえないでしょ。絶対ありえないでしょ。
いつも素直だったらどんなに楽か……。
なんて思ったけど、でもやっぱりノアはノアでいいやと、どういうわけか思い直してしまった。
あたしの思考回路も、疲れてるんだきっと。
あたしはノアに掴まれていた手を伸ばして、車の中でしていたように、ゆっくりと頭を撫でた。
髪の毛がさらさらと落ちて、ノアの目を隠す。
ノアはあたしの手を離し、髪の毛をどかすこともせず瞼を閉じる。
「……こうしてる方が落ち着く?」
「……うん」
「…じゃあ、こうしてるね。寝てもいいから」
ノアの雰囲気が違うから、あたしまで調子が狂ってしまう。
こんなに優しく、誰かに言葉をかけるのは、もしかしたら初めてかもしれない。
ましてやノアに、自分が優しくできるなんて思いもしなかった。
普段はいつも、優しくなんてできないから。
ノアはいつも、“ノア”として優しくされる隙を見せない、から。
あたしは柔らかな髪の毛を撫でつけるように手を滑らせる。
そのまま頬まで滑らせると、手のひらから人と同じ体温が伝わってきた。


