充電終わったらキスしよう






「……ミャーコ…」


不意に呼ばれて、あたしはいつの間にか腕にうずめてしまっていた顔を上げようとした。

その前髪を、微かに撫でていく手があって。

思わずピクリと止まってしまって、けれどあたしはゆっくりと顔を上げる。

こちら向きに寝ていたノアの、ずっと閉じていた瞼が完全とまではいかずとも開いていた。

ちょうど15センチ定規一つ分くらいの距離で、逸らす間もなく目が合った。

久しぶりに見たようなノアの瞳は、しかしいつもの冷たさはそこにない。

あたたかいというわけでもないけど、でも普段あたしに向けているあの冷たい瞳ではなかった。


「……もう喋って大丈夫?」


距離をそのままにあたしは尋ねる。

ノアは小さく首肯した。


「……そっか。よかった」

「…………。」

「充電、まだかかるでしょ」

「……うん」

「じゃ、まだ寝ててもいいよ。あたし今日泊まるからここ居るし」


言いながら、あたしは顎の下にあった片手を伸ばして、ノアの前髪に触れた。

同時に額も触ったら、温度は少し寒がりな人、くらいのものになっていた。