それがわかるや否や、あたしはコンセントが設置された壁にぐたっと寄り掛かった。
大きく息を吸い、吐く。
鼓膜にこびりついていた警告音が、すっと消えた。
そんなに走り回ったわけではないのに、無駄に体力使うって言うか、いや体力と言うより精神力か。
とにかく、面白いくらいに疲れた。
それは春人の方も同じだったようで、ノアが横になっているソファにぐでっと額を乗せて肩を上下させていた。
春人はあたしより体力ないから、今走ったってか慌てたせいでどっと疲れたんだと思う。
あと、あたしとノアが戻ってくるまで、ずっと心配だっただろうし。
……あ、しまったそういえば。
あたしはふと、教育合宿を思い出し、何故ノアが合宿に参加しなければならなかったかを思い出し、はあとため息をついた。
次いで立ち上がり、春人へと歩み寄る。
すぐ隣にしゃがみこみ、ソファに額を乗せている春人の顔を覗き込むようにして口を開く。
「春人、ちょーっと顔上げて。」
「……ふぁい」
気の抜けた返事をしながらゆるゆるっと力なく上がった顔は、僅かながら赤い。
……しまった。ホントにしまった。
あたしはその額に手を持っていき、手のひらを当てる。
うん、熱いね。


