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「でもさー」と、隣からいつもと変わらない調子で泉は言う。
「まさかホントに俺が駆り出されるとは思わなかったよねー」
「運転できるって言ったのはどこの誰だよお前だよ。」
「そりゃねー運転はできるって言ったけどさーマジで使われるとは思ってなかったし?」
「運転できるっつった時点で駆り出されるフラグ立ってんだからつべこべ言わずに運転してればいいと思うよ。」
「なんていうかさー今すぐ車から放り出したい気分だよねーミヤコさーん」
「うるさい黙れ。」
あたしは運転席からあーだこーだ言ってくるオニイサマにそう一喝してから、窓の外へと視線を向ける。
とか言っといてアレなんだけど今までずっと窓の外見てたんだよねっていう。
車の外を流れる景色は、夜の街をどんどん後方へと流していく。
そのままどこへ向かっているかというと、まあ、言うまでもなく。
「…でー、その合宿所ってどこよ?」
「一応地図貰ってきたんだけどよくわからん。とりあえず道案内はするけど」
「うわめっちゃ不安ーミヤコ地図読めない人だっけー遭難するとかマジ勘弁ー」
「黙れっつってんだろハイそこ右!」
「この人ホント怖いわーどこの教官よー」とかなんとか表情はそのままに言ってる兄貴など虫に、間違った、無視に限る。
今はそれどころではないのだ。
だってそうでしょ。
ノアが倒れたって言うんだからさ。