そういえばたしかに、泉は自分が面白いと思ったことしか覚えてなかった。
嫌なこととかすぐ忘れるタイプの人間だからある意味プラス思考なポジティブ野郎なのかもしれない。
(ついでに嫌な思い出の中に居る中心人物のことも忘れたりする大変最低な人間である。)
とにかくそんな性格の泉が忘れてしまうほど面白くない(というか面倒)らしい教育合宿。
まああたしも参加したっちゃしたけど、あたしは生物学上一応女子なのであんまり参考にならないかなと思った次第です。
「ってゆーか、なんでそんなこと聞くの?」
「今年コイツが行かなきゃなんないんで参考までにと。」
泉の問いかけに、あたしはオレンジジュースを飲んでいるノアを指さしつつそう答える。
泉は「あーなるほどねー」と理解したようで。
「春人クンは体弱いからダイジョブかーってことねー」
「そうそう」
「別にいんじゃないのー?行きたいなら行けばいいじゃーん」
「ぶっ倒れた時どうしようかと。桜井家両親は今共働きらしいから迎えとかムリっぽいし」
「ふーん。まあそん時はウチでもいんじゃねー?」
「それ考えたんだけどウチも働いてるしー……って、あ、お前」
ハッとした。
そうだわ、そういえばそうだわ。
ウチの兄さんってば18歳越えてんじゃんコイツ使えるんじゃんちょっとそれはマジっすか。
と、いう思いを込めて泉を見ると、ヤツはいつもと変わらずニコニコ笑顔で答えた。
「あー、うん。一応運転できるのよ、俺」