「……ノア」
「なに。」
「あたしの家に着いたらコンマの速さで回れ右してね」
「最初からそうするつもりだけど。」
「ですよねー」
こちらからお願いするのもどうかと思うけどコイツの返答もどうかと思う。
でもこれでウチの家族とノアが鉢合わせになる確率が減ったわけだ。
ウチの家族は春人を我が子のように可愛がっているもんだから、そんな春人に冷めきった態度を取られたら100%とは言わないけど120%くらいの確率で卒倒すると予測されるから。
“%”の使い方が間違ってるような気がするけど大丈夫だ、問題ない。
まあそんな確率もほぼ0になったわけだが。
冷や汗も徐々に引いてきて、さてそろそろウチに着く頃かと胸を撫で下ろしたあたしの耳に、その時。
「前方に見慣れた人影をはっけーん」
なんていう、ムカつく声が聞こえてきた。
ムカつくとか言ってる時点で、声の主があたしの知ってる人だってことは一目瞭然である。
弾かれたように顔を上げたあたしの、視線の先に居たのは、
「久しぶりじゃんミヤコー。……と、春人クン」
「……マジかよ。」
間違いなく我が家族、あたしの実の兄貴である、朝倉泉(イズミ)その人だった。


