そう、見えてしまったのだ。
それだけの理由だ。
あたしは世話好きの物好きなのだ。
それだけの理由だ。
だから自分が着てたブレザーを脱いでノアにかけてあげるとかしたことに深い意味はない。
ないよ。これっぽっちも。
ノアはまだ少し辛そうな表情で、けれどしっかり、肩越しにあたしを見た。
あたしはその瞳から視線を逸らしながら、もう一度壁に寄り掛かる。
準備室の壁の冷たさがワイシャツ越しに伝わってきて少し身震いしてしまったけど気のせいです。
「……ミャーコ」
「…なによ」
「……寒くないの」
「今のお前よりは寒くないよ」
投げやりのように言葉を返すと、ノアはあたしから目を逸らし、また力を抜いて壁に体を預けた。
しばらくの沈黙が降り立った後、小さな声で「…どーも」っていう無愛想なお礼の言葉があたしに届いた。
あたしもお返しと言わんばかりに「いーえ」と無愛想に答えてやった。
実は内心で挿してる充電器のコンセントがなんか猫の尻尾みたいに見えてきたよどうしよう吹きそうとか思ってたことは上着を貸してあげたというのでチャラにしてほしいと思う。


