充電終わったらキスしよう





『ノア、立って。立てるでしょ』

『……待って…』

『早くしないと充電切れの音がするじゃん。あの音嫌いなんだってば、あと絶対うるさい』

『…ミャーコ、手、痛い…』

『じゃあ早く立て。更衣室コンセントないんだから』


昨日のように、ノアの手をあたしの肩に回して、無理やりにでも立たせる。

なんとか立ち上がったノアを支えつつ、あたしは更衣室を出た。


早くしないと充電が切れる。

早く充電しなきゃいけない。

絶対苦しいと思うから。


言わなかったけどさ。

あたしが言いたくなかったから言わなかったんだけどさ。

あの電子音も、ノアの苦しそうな表情も、全部嫌いなんだよ、あたし。


だって怖い。

急かされる、早くしないと死んでしまうよって、伝えてくる警告音と。

それに比例するように力が抜けていく、ノアの機械的な重さが。

死を目の当たりにしてしまいそうで恐ろしい。

あたしはどうしても、“充電切れ”が、好きになれそうにないのだ。


今だってほら、あたしのすぐ傍で荒い呼吸をしてるノアが居る。

まだ冷たくはない。でも人間のようにあたたかくもない。

コンセントのある場所に早く行かなきゃヤバい。

でもどこに行こう。どこに行ったらいいだろう。