ヤツに頭下げるなどなんたる屈辱ではあるがあたしが悪いことはわかってるから、ちゃんと謝らなきゃいけない。

ムカつくからとか嫌いだからとかいう理由で、自分が悪かったことを謝らないのは違うとあたしは思ってる。

というわけで謝る。


「あのさ、ノア。あたしちょっと言いたいことがって居ねぇー…」


人が意を決して振り返ったというのに目的の人物はどこにもいませんでした。アーメン。


じゃねぇよ。


「おい!ノア!あたし言いたいことあんのよ顔かせ!」

「……なに」


決意を踏みにじられたと言っても過言ではな…くはないけど、でもムカついたので思わず叫んでやったら、ドアの向こうから返答が来た。

どうやら部屋を出たところだったらしい。

がしかし一向にドアの開く気配がないので、あくまでもドアを隔てた状態で話を聞くようだ。

いちいち人の癇に障るヤツだなおい。

顔見て言いたかったけどノアがそれでいいってんなら別にいいさ。


ってなわけであたしはドアに向かって言うことに。

なにこれむなしい。


「…えーっと、昼間にスリッパで殴ってごめん」

「…………。」

「それだけ」