「話ってそれだけ」
「語尾に“?”くらいはつけろよ」
「あんまそういう喋り方できないっぽい」
「わかりにくいヤツだな…」
「うるさい」
棘も何もないような言い返しをしてから、抑揚のない喋り方しかできないらしいノアは、座っていたソファから立ち上がる。
リビングを出て行こうとしたので「風呂?」と聞いたら「うん」という答えが返ってきた。
マジで風呂に入るらしい。
それで壊れたら笑ってしんぜようとか思ったりしてないからホントごめん。
あたしはリビングのドアが閉まる音を聞きながら、さっきからずっと黙っている春人へと視線を向ける。
春人はソファで膝を抱えたまま、うつらうつらしていやがりました。
子供か。子供なのか。
うつらうつらしながら、横に傾き倒れそうになったところでピクッと起き上がったがしかし再び横に倒れそうになる春人があまりにも危うかったのであたしは移動することに決めた。
電車の中でそうなってる人はよく見るけど、まさか自宅のソファの上でそうなる人が居たとか思いもしなかったよ春人クン。
春人の座る(寝る)ソファに移動したあたしは、また倒れそうになっている春人の右肩をそっと押さえて、そのままソファに腰を下ろす。
それから右肩を押さえていた手をゆっくりと離すと、春人はとんっとあたしの左肩に頭を乗せた。
身長差があまりにもないので、フツーに肩に頭が乗る。
それもどうかと思うけどね。


