春の旋律




先生は曲を最後まで弾き終わって私の方を向いた。


私は鼻をぐずぐずとさせながら、


「ごめんなさい……泣くつもりはなかったんですけど……」


と言った。


すると先生は、首をゆっくり振って、ピアノ椅子に座ったまま、私の手を引いた。


……………え?


私はふらりとバランスを崩して、先生に抱きつく形になった。


「せ、んせい…?」


先生は私の腰に手を回して、きつく抱き締めてきた。


「……そんな顔されたら、困ってしまいます」


「………な、え?」


「かわいすぎるんです」


「……?」


「僕、畑中さんの事、好きみたいです」


「…………は?」


先生は私の首もとに埋めていた顔を上げて、至近距離で私の顔を見上げてきた。


「好きです、畑中さん」


「あ…え………」


そんな……。いきなりそんなこと……どど、どうしよう……。


その焦りがそのまま顔に出ていたようで、先生はふっと笑って、私の腰に回していた手を解いた。


「こんな、いきなり告白されたら、困るよね」


「な、そんなこと……!!」


私は慌てて先生の手首をパシッと掴んだ。