「美味し…」
「だろ?一回だけ店の厨房やってた頃があってさーまだ腕は鈍ってねえみたいだな」
桜も席に座って食べだす。
「…これどうしたの」
「冷蔵庫にあるやつ使って作ったって言っただろ」
「あたしん家の冷蔵庫から?」
「当たり前だろ、寝ぼけてんの?」
「…あんたすごいね」
「俺料理人だもん」
確かに美味しい。
美味しいけど、何だか少し悔しい。
正直言って料理桜に負けたかも。
だからちょっとだけ意地悪してやりたくなった。
「料理人なら毎食桜が作ってくれるよね」
ちらっと目線を合わせて言うとふっと笑って「俺、雪の手料理も食べたいな」だって。
チッ、彼はどうやら一枚上手の様だ。
「ごちそうさま」
「ん」
見事に完食して手を合わせる。
久しぶりかも、ちゃんとした朝御飯食べたのなんて。
「あ、皿洗いはあたしやるよ」
「いいよ」
「でも」
「雪にはこれからたくさん世話になるんだし、それくらいさせて」
そう言われると何て返せばいいか分かんなくなるじゃん。
カチャ
「雪?」
「じゃあ二人で皿洗いしよそれくらいいいでしょ」
「ふ、素直に休んでればいいのに」
「悪いけどあたしそういう主義なの」
「雪って優しいね」
「…」
不意討ちでそんなこと言わないで欲しい。
…慣れてないから正直どう返せばいいか分かんなくなる。
戸惑うあたしはただ頬に熱を感じなりながらもひたすら皿を洗うことに集中するしか出来なかった。
