「オイ理月。いつまでばぁちゃんの遺品いじってんだ?」

8歳年上、先程大声を上げた兄、白雪 修夜。
その声に理月は安心したかのように息をついた。

「ビビッたぁ…なんだ…兄貴か…」

「なんだよその言い草は…」

修夜はあからさまに不機嫌な声を出した。

「いや…別に…」

理月は目を逸らし言う。

すると修夜は理月の手の中にある本に顔を覗かせる。

「ナニ見て「うわぁぁぁぁぁぁ!?」な…なんだよ…」



理月は思わず声を上げる。
修夜は顔を歪ませる。

しかし修夜の視線は本から外れていない。

「(見っ…見られた…!?)」
理月は顔を青ざめさせる。

しかし修夜の口からは予想外の言葉が出た。

「ナンだよこれ…全部英語…?じ無ねぇか…
いやヨーロッパの…古代文章?読めねぇや」

どうやら都内の外国語大学をトップで卒業した修夜によると
英語では無いらしい。
「…え?」

理月は英語の成績は兄の高校時代の半分にも満たないので
英語かどうかなど判断すらつかないのだ。

しかし今、理月には文面が日本語にしか見えないのだ。
確かに少し前は英語…いや、不明慮な文だったのだが…

「え?ってなんだよ?」



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