学園(姫)

誰もいなくなり、俺は仰向けになりながら空を見る。

「遠いなあ」

近くなったかのように思えた。

しかし、本当の近さではない。

龍先輩は、いつかは終わると言ってしまった。

「はあ、そうか」

龍先輩はまだ俺に気を使っている。

「爺さんの欲しい物って何だよ」

今すぐには答えは出てこない。

そんなにすぐに出てくるなら、苦労という文字はこの世にはない。

「一人で何を言ってるアルか」

何者かが空と俺との間を遮る。

逆光で誰かわからなかったが、口調で分かってしまう程に謎の人物ではない。

「吟ネエ」

俺は背を起こすと、吟ネエは屋上入り口の屋根に上ろうとしていた。

「サボりかよ?」

「お前もその口アル」

「え?」

携帯を取り出し時間を見てみると、休憩時間が終わっていた。

「あー、気づかなかった」

考え事をするって凄いなと思いながらも動く気がしなかった。

「たまにはいいか」

俺は再び横になる。

「はあ」

しかし、横になっている時間なんてあるのだろうか。

閃くっていうのは何もないところから生まれる物ではない。

自分の見た物、感じた物から生まれるのだ。

それが凡人である者の宿命なのではないだろうか。

「行動しなくちゃ、いけないんだよな」

だるい体を起こし、俺は立ち上がる。

「吟ネエ、ちゃんと授業出ろよー」

入り口の屋根からひょこっと顔を見せる。

「情けない奴アル」

全てを知っているような言い草だ。

吟ネエって、何でも知っていてもおかしくないキャラだしな。