学園(姫)

「姫の突っ込みはさえておるのう」

京四郎は嬉しそうな顔をしている。

「丞ちゃん、そなたの気持ちは嬉しい」

「ああ」

「でもな、おじい様の言っておる事は確かじゃ」

龍先輩は悲しそうな顔をする。

「いつかは、別れはくる」

俺は何も言えないでいた。

「丞よ。今しばらくは夢を見させておくれ」

龍先輩は背中を見せて、一人降りていく。

とても、寂しそうだった。

追いかけるべきだと思う。

でも、何て声をかけるんだ?

相手を納得させるには、根拠と資料が必要だ。

京四郎がいったように、俺には何もなかった。

「くそ」

「何、姫に悲しい思いさせてんだ?」

京四郎の瞳は怒りに燃えている。

「一つ、お願いがあります」

俺は土下座する。

「俺に、力を貸してください!」

「さっきの威勢から、今度は土下座か」

「こうするしか、俺には龍先輩を助ける方法がない」

どこの代で龍のグループを大きくしたのかはわからないが、龍京四郎という人物もまた龍のグループだった事には変わりない。

「男が、簡単に土下座なんかするんじゃねえ」

京四郎は俺を蹴り飛ばす。

「男の土下座なんて見ても何も満たされない。俺を満足させる品物を持ってきてみろ。話はそれからだ」

京四郎も屋上から降りていき、残されたのは俺一人になった。