学園(姫)

「丞ちゃんではないか」

おじさんの背後に立っているのは、龍先輩だ。

「ハロウ」

「そなたは何をやっておる?」

覗き見をしていたのだが、龍先輩に怒った様子はない。

「いや、ちょっと姫ちゃんの後ろ姿を見たんでね」

「姫ちゃん?」

おじさんのドスの聞いた声が耳に届く。

「お爺様、その呼び方はワラワが頼んだのじゃ」

龍先輩のお爺様という呼び方からして、龍先輩とおじさんの関係性が分かる。

しかし、不穏な空気が辺りを包んでいる。

「何だと?何と羨ましい!」

「は?」

「坊主、潰したいほど羨ましい」

おじさんはとてつもなく物騒だ。

龍先輩がおじさんを落ち着かせて、三人で屋上に集まった。

「ワラワのお爺様である龍京四郎じゃ」

予想通り祖父らしい。

もしかすると、乾を雇ったかもしれない人だ。

「葉桜丞といいます、よろしくお願いします」

頭を下げると、京四郎が手を出してくる。

「はあ」

京四郎と握手すると、握手とは思えない握力をかけてきた。

「よろしくな」

むかつくほどの笑顔だ。

龍先輩に気づかれないようにしているのだが、龍先輩はジト目で京四郎のことを見ている。

可愛いと言いたいところだが、余裕はない。

「ぐ、お」

攻撃されている以上、相手が誰であっても関係ない。

「よー、ろー、しー、く」

俺も京四郎に対抗するべく、力を入れた。