学園(姫)

「思考せず、与えられた情報に従うのは誰でも出来る」

冷静に言い放つと、立ち上がる。

そして、金を払い喫茶店から出て行く。

俺は立ち尽くしたまま、乾に何もいえないでいた。

乾からの道を閉ざされてしまった以上、他の方法を考えるしかないだろう。

今から、乾の後をつけたところで意味がない。

俺も喫茶店から出て、路上に立った。

「どうするか」

龍先輩は誰が乾光蔵を雇ったのか、知っているはずだ。

自分の事に対して、無知じゃない。

しかし、答えてくれはしないだろう。

龍先輩は乾のルールを壊すような事をしない。

それくらいの常識は弁えているはずだ。

「情報が何もないんだよな」

歩きながらも考えては見るが、憶測の域の出ない事ばかりだ。

憶測を表示してみる。

まず、親が雇っているというのはどうだろう。

結婚前の娘を傷つけないために、乾を雇う。

でも、親の考え方は閨閥結婚に当たる。

乾は先輩を守りはするが、閨閥結婚には協力していない。

協力しているのならば、俺と先輩を恋仲にするような協力はしない。

先輩は親を好いてはいない。

親の雇った乾に対して、優しい素振りを見せるだろうか。

誰にでも優しいとはいえ、先輩だって人間。

嫌な事は嫌なのだ。

親に関することは極力避けたいのが本心ではないのだろうか。

でも、先輩だからな。

そこは親の雇った人間でも、優しく接する可能性もあるよな。

それでも、親が雇った線は薄いだろう。