学校に着くまでにも注意深く辺りに気を配る。

龍先輩とすれ違うなんて事もあるからだ。

しかし、龍先輩が見当たることもなく、学校の校門前にたどり着いてしまった。

「はあ」

龍先輩の顔を拝めたかったのもあるが、本件のほうも進めておきたかった。

「肩を落として、何をしておるのじゃ?」

背後を向くと、龍先輩と乾が立っていた。

「姫ちゃん」

都合の良い出来事に、安堵する。

「何じゃ、ワラワの顔に何かついておるか?」

勘違いしたのか、龍先輩は顔を赤らめながらもかばんの中から鏡を取り出して眺める。

「今日も可愛いと思ってね」

「馬鹿者、からかうでない」

「本心だよ」

「むー」

久々のむー言語を聞き入れながらも、先輩と歩き始める。

乾は校門の外で背中を見せていた。

先輩の前でクライアントの話のはよくないと思う。

余計な心配をさせてはならない。

平穏な世界で過ごしてもらいたい。

でももし、バレたとしたら、先輩は怒るだろう。

それくらいは分かる。

でも、出来る限りは自分の力で何とかしたいじゃないか。

いや、自分だけの力じゃないんだけどな。

乾やクライアントの力があってこそ、龍先輩の状況を動かすことが出来る。

「じゃあ、また後でのう」

「うん」

階段で先輩と別れ、俺は再び校門へと走った。