学園(姫)

俺たちはゆっくりと歩き始めた。

乾の姿もちゃっかり見えてはいるが、遠くを歩いている。

仕事はちゃんと忘れていないようだ。

「夕方だっていうのに、日差しが強いね」

「そうじゃな」

赤く染まった顔は新しい表情を作っているかのようだ。

「そういや、今日の料理の感想言うの忘れてたよ」

「どうじゃった?」

興味を示した顔をして、俺を見ている。

「そうだな」

「うん」

「あれだよ」

「うん」

「まあ、そういう事だ」

「どういう事じゃ!」

脇腹への掌底により、俺は体がくの字になった。

「ご、ごえ」

「そなたは変わらぬな」

「冗談だよ、冗談」

膝をついていた俺は立ち上がり、服を整える。

「あの夕日が美しさが10としよう、龍先輩の作った料理も10なんだ」

「よく分からぬ感想じゃな」

「美しくも美味い。そして、感動できるって事さ」

「そうか、そなたがそう言ってくれると、作った甲斐があった」

安心したように胸をなでおろしている。

何だろうな。

隣に誰かが歩くだけで胸が高鳴るなんてなかった。