学園(姫)

「先輩、これから時間あります?」

「なきにしもあらずと言ったところじゃ」

「ちょっと二人で散歩でもしませんか?」

さっきまではポカミスを犯す前に帰ろうと思っていた。

しかし、このまま帰ってしまうのも勿体無いと思い始める。

「構わぬ」

「本当ですか!?」

嬉しさのあまり立ち上がってしまう。

「ただし、光蔵は連れて行く。それが条件じゃ」

「それくらいだったら、問題なんてありませんよ」

乾がいようがいまいが俺には関係ない。

先輩と共に歩けるという事実が嬉しいのだ。

「じゃあ、早速いきましょういきましょう」

俺は先輩の手をとって、立ち上がらせる。

「ほんに、そなたは変わり者じゃな」

「他の奴等よりも素直な気持ちでいるだけですよ」

きっと、他の奴も龍先輩とお近づきになりたいと思っているはずだ。

しかし、乾や龍先輩の環境から、臆しているという流れだろう。

だから何だというのだ。

龍先輩と共にいたいと思うのなら、行動すればいい。

「学校内を周るだけでよいのか?」

「街のほうまでいきましょう」

「あてでもあるのかえ?」

「なきにしもあらずってところですかね」

本当のところは何も考えてなかったりする。

校舎を出ると、乾が待っていた。

「これから街まで散歩に出るのじゃが、良いか?」

「構わん」

無愛想に一言告げると、俺達の後ろを静かに付いてくる。