「こんにちは。」
俺は
男の前まで来ると
軽く頭を下げた
向こうは優雅に
頷くように首を縦に振った
「こんにちは。
…昨夜は悪かったね。
気を遣わせたみたいで…。」
「いえ。
新井さんにはいろいろお世話になってます。
俺、新井さんの隣に住んでる
早川護です。
法学部3年です。」
「ああ、彼女から聞いてるよ。
俺は山中教授の助手をしてる。
この大学の研究員生…とでもいうのかな?
新井紗季ちゃんの大学の先輩で
河野文孝。よろしく。」
「河野って…あの…河野さんですか?」
「どの河野さんだろうね?
そんなに俺の噂ある?」
「あ、いえ。」
さっきよりも
睨むような鋭い視線を向けられて
思わず
口ごもってしまった
情けねぇ…俺
でも
河野さんの話し方や
仕草は
俺の周りにいる度の先輩よりも
洗礼されてて
大人っぽく感じた


