「でも、それでもミツはハルが好きなの!ハルにはミツだけじゃないって知ってるけど…ミツにはハルだけなんだもん」



涙でウルウルと艶めく目に俺が写っている。

その俺は酷く冷たい目をしていた―




「俺はミツを好きだけど、ソレは愛情ではない。それに最初に言ったよな?お互いに感情は求めないって…」


「わかってる!わかってたんだけど」


「じゃ、イイじゃん。ソレを求めるなら…もうミツとはデキナイ」


「………ハ、ル」


ミツの大きな目が更に大きく見開かれ、またポロポロと涙が頬を転がってゆく。

ソレを見ない様にしたのは多少なりある罪悪感を感じたから…




「悪いケド、気持ちには応えらんない。それから…もう――――」


「イヤッ!!!」



グッと掴まれた袖に身体が持っていかれた。



「ミツ…」



端から見たら俺がミツを押し倒しているみたいな体勢になる。



「放せって」


「嫌だ!ミツはハルが好きなんだもん!」


多分ミツは身体中が床に打ち付けられて痛みが走っているだろう。

それでもミツは掴んだ俺の腕を放さなかった。

よほど強く掴んでいるのか指先が白くなっている。



「ねぇ、なんで市丸さんなの…」


「え?」



涙で赤くなった目は俺を写しながらもドコか違う何かをみているみたいだった。




「あんな子…ハルには似合わないじゃない」


「………」



何も言えない


確かに俺とジュンじゃつりあわない。

素行もだけど、なによりアノ関係がある。


《父親の妻》 つまり《義理の母親》で《親子》で…


書面上とはいえ《親子》
決して
想ってはいけない人…


認めたくはないけど、現実は現実なのだから




「ミツのが絶対にハルがすきなのに…なんであの人なの?」


「ミツ…」


「絶対にイヤだもん!ミツ、あの子だけは絶対にイヤ!…ィャなの、だから…………だから」



小さくなるミツの言葉は俺には聞き取れなかった。