The ring is a cupid

段々と人通りが減ってくると、私はすぐに一つの背中を見つけた。


「斉藤くんっ」


息があがっていて、思うように声が出なかったのに彼は気づいてくれた。


「あれ?的場?どうしたの、そんな焦って」

目をまるくしながら私を見つめる。


「あ、あのね…」

呼吸を落ち着かせながら言葉を繋ぐ。


手が震える。声も震える。


頑張れ、私!

一度押された背中をもう一度自分で押して、息を吸った。


「ずっと、斉藤くんの事が…好き、でした」


風で揺れる何処かの木の葉の音がする。



すぐに、風は止んで静まり返ったこの空間に彼の声が響いた。


「俺も」


ああ、また泣いてしまった。


信じられなくて、嘘みたいで。


不意に抱きしめられて、その温かさにもっと泣いた。