**夢に咲く華**

右京父さんから電話がかかってきても出られないように杏の携帯を取り上げ電源を切ると、俺は車を降り杏の手をとり目的の場所へとエスコートした。

目的地より少し離れた場所に車を止めたのは杏を驚かせたかったからだ。

杏の手を引き通りを横切り目的の店の前へ来た時、予想通りの反応を見せる杏に込み上げてくる嬉しさを隠す事が出来ないほど浮かれていたと思う。

「え? 暁…ここって?」

そこは大学の後輩の彼女が働いている海外ブランドの直営店で、杏が以前から雑誌を見ては溜息を付いていたのを俺は知っていた。

普通の高校生には手の出る金額の洋服では無いし、デザインも杏の年齢には少し大人っぽいと思う。

だけど、俺は杏の16才の誕生日にはここで洋服を買ってやろうと今年に入った頃から決めていた。

たとえ自分のものにならない少女でも、大人の仲間入りをする記念すべき日に俺からの精一杯の想いを込めて大人の女性へのプレゼントをしてやりたいと思っていたからだ。

まさか、杏を自分の彼女としてここへ連れてくることになるとは夢にも思わなかった。


夢じゃないよな?