「杏…俺はおまえのこと…」
「暁…あたし、アメリカに行く…。もう暁に会わない」

俺の言葉をさえぎるように杏が言った言葉に冷水を浴びせられた気分になった。


――アメリカに行く―――


杏の言った言葉が頭の中をワンワンと響いて脳が上手く機能しない。

杏は今、何を言った――?

また、俺との間に手の届かない距離を置こうとするのか?

「あ…杏?どういうことだよ」

情けないけど俺の声は震えていたと思う。
やっと自分に素直になったら杏は遠くへ飛び立とうとする。

一体いつになったら俺たちの距離は縮まるんだ。

「暁の妹でいるのはもう疲れたの。もう大人になりたいの。」

杏は瞳に涙を浮かべてそれでも必死に流すまいと堪えている。
その姿は余りに痛々しくいじらしい。

『杏ちゃんを傷つけてるのも、泣かしてるのも、全部おまえじゃねえか』


響の言葉を思い出した。