【中編】夢幻華

「ねえ。ねえ暁。パパ、すごく怒ってたみたいよ?」

「大丈夫だろ?蒼母さんと、うちの父さんが宥めるよ。
それより今日はこのまま帰らないからな。」

「ええ!本気?どこへ行くつもりなの?」

「どこか遠くへ行こう。知り合いも誰もいないところへ…
誰にも邪魔されず、ふたりだけで過ごせる所で誕生日を祝おう。」

「暁…。」

杏が驚いたように目を見開き潤んだ瞳で嬉しそうに俺を見つめ、何か言いたそうにさくらんぼのようなの唇を音もなく動かす。

その声を聞き取りたくて、問う様に首を傾けてみせると、まるで春風に揺れる淡い薄桃色の杏の花のように微笑んだ。

……なんかすごくいい雰囲気かも。告白するならなら今かな?

でも、やっぱりキスぐらいしたいしなあ、車運転しながらは無理だなあ。まあ、とりあえず最初の目的地はもうすぐだしそこまで我慢して…

つらつらと今後の予定の事を考え(妄想して)ていると杏の携帯が鳴り出した。