【中編】夢幻華


俺が家に帰ったのはもう、朝方の5時になる頃だった。

誰も起きていないと思ったのにリビングに灯りがついている。

覗いて見ると父さんが朱音に付き合って遊んでやっているところだった。朱音は3才になったところだ。かわいい盛りだが最近やたらと早起きで、このくらいの時間に遊びだす事がある。

「おにーたん、おかえり~♪」

そう言って俺に両手を伸ばし抱っこをおねだりする朱音は、兄バカといわれても良いと思うくらいにかわいい。

俺が抱き上げると嬉しそうに『ちゅ~』とキスのおねだりをしてくる。

父さんが俺にキスする朱音を見て、『ああ~朱音。パパにも~』とか何とか情けない顔で言っている。

誰だよおまえ?

朱音もこの『ちゅ~』をいつか他の男とするんだよな…。

バカみたいに朱音にメロメロの父さんが心配になってくる。

ありゃ絶対に嫁には出せないよな。

いや、婿にきたって反対するんじゃねえか?

そう考えてみると、ふと右京父さんの事を思い出した。

右京父さんも杏を嫁に出せないんじゃないか?

娘を誰かにとられる父親の気持ちって…どんなだろう。