【中編】夢幻華

「傷つく事を恐れないその瞳、素直に好きと向かっていける勇気。暁は手に入れたんだね。…羨ましいよ」

百合子の言葉に、今までの俺の心がいかに歪んでいたかを感じた。
杏を想う事の痛みや苦しみで瞳が曇っていた事も、心が潰れていた事も、今は素直に認めて見つめる事が出来る。



「ごめん…百合子」

「謝る事はないよ。あたしも暁にはいっぱい癒された。幸せになってね。あたしは…まだ、彼を愛しているし、忘れるつもりは無いから。…また恋人契約してくれるパートナー探すよ。今度は暁ほど彼に似ている人には出逢えないかもしれないけど…」

「百合子…」

「大丈夫、気にしないで。もともと、パートナーってことで本当の恋人同士としての感情があったわけじゃないでしょ? 友達がいなくなるくらいの寂しさよ」

「うん…。でも俺は寂しいよ。おまえに沢山助けてもらったし、杏がいなかったらきっとおまえに惚れていたと思う」

「本当? フフッ…うれしい。ありがとう」

「こっちこそ…ありがとうな。」

「ねえ…最後に一回だけキスしてもいい?」


一瞬どうしていいか分からなかった。

百合子の最後の頼み…


それでも…もう、杏以外の女性を受け入れる気持ちにはなれなかった。