【中編】夢幻華

彼女は一生、愛する人を胸に抱いて生きていくのだろう。

俺が杏を一生想い続けていく様に…。

杏の面影を濃く映す彼女の横顔と、美しい腰までの髪。

愛しい女性を投影できる彼女がいれば、たとえこの想いが砕け、いつか杏が誰かのものになっても耐えられるはずだと思っていた。

嫌われるくらいならずっと兄のままでもいいと思っていた。

それで納得していたつもりだった。


だが…俺は気付いてしまった。

自分の本当の気持ちに。

俺が本当にほしいのは影ではなく、腕の中で輝く本物の杏だということに。

確かに百合子は杏と似ている。

でも彼女は杏じゃない。

どんなに似ていても杏にはなれない。

その現実を受け入れたくなくて、ずっと目を逸らし続けてきたけれど、ようやく現実を受け入れることが出来た。


たとえ嫌われても、届かない想いでも、俺には杏しかいない。

杏の代わりなど、どこにもいない。

どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだろう…。

ゴメン、百合子。

おまえを裏切る事になるけど…

俺は、やっぱり杏しか愛せないんだ。