俺は杏を好きになっていく自分が怖かった。

杏が俺に無邪気に抱きついてくる事が辛かった。

それまではあたりまえのように抱きしめたり一緒に寝たりしていたのに、いつの頃からだろうか。
杏がそばにいるだけで、抱きしめたりキスをしたくなる自分を抑えられなくなっていった。

杏が中学に上がった頃から俺は自分の行動に歯止めが利かなくなった。

無邪気に俺の腕の中で眠る杏に気付かれないようにキスをする事を止められなかったり、それ以上を求めたくなっていった。

思春期の一時的な衝動と言ってしまえばそれまでかもしれない。

だけど、俺にとって杏は誰よりも大切な存在だった。

その大切な存在を自分の手で汚してしまいそうで自分自身が怖くてしかたが無くて…
距離をとるしかないと思った。

杏以外の誰かに興味を持とうと、言い寄ってくる女なら誰とでも付き合ってみた。

だけど、何をしているときも、相手の娘を杏と重ねてしまう。

女から誘ってきたら寝る事もあったけど、そんな時もいつだって杏の姿を重ねていた。

杏だと思いたくて、声を出させぬよう相手の口を塞ぎ、目を瞑って抱いた事もあった。

杏と同じように腰までの長い髪にするように強要する事もあった。

俺のやってた事は最低だってわかってる。


だけど、あの頃はそうでもしないと自分を支えられなかった。


そんな自分に嫌気がさしていた頃…俺は百合子に出逢った。