その夜、行きつけのショットバーで、俺はバーボンを煽っていた。

何度頭から振り払おうとしても、紅いバラがちらつき、響の腕の中で微笑む杏が浮かんでは消える。

杏が響のキスを受け入れて、乱れていく姿が浮かび、思わず怒りに拳を握り締めた。

杏…

お前にこの想いは永遠に届かない運命なのか


グラスを煽りカウンターに打ち付け、次のグラスを頼もうと顔を上げたとき

見慣れた、今一番見たくない奴の顔がそこにあった。

「…響……てめぇ、どの面下げて俺の前にいるんだよ」

怒りで目の前が赤く染まるのを感じた。

その赤が深紅のバラの赤に重なる。

嫉妬が胸の奥からドロドロと湧き出してきて止まらなかった。