「あれ?杏ちゃんじゃないか?」

聞き覚えのある声に振り返ると、暁の友達の響さんが立っていた。

「どうしたの?こんな道端で突っ立って、綺麗な花束を抱えてしょげてるなんて」

響さんが優しく微笑んで、あたしの髪をクシャとかき回すようにしてくる。

「元気出せよ。何かあったのか?俺でよければ相談に乗るよ。
暁ほどの特効薬にはなれないけど多少の鎮痛剤くらいにはなるかもしれないだろ?」

『吐き出して楽になれよ』響さんはそう言って優しく笑った。

響さんから暁の名前を聞くと、それまで胸の中に溜め込んだ想いが一気にこみ上げてきた。

「響さん…あたし告白されたの。付き合って欲しいって…誕生日のプレゼントにって花束もらったの。
でも、あたし、応えられないの。
彼の気持ちが痛いほど分かるのに応えてあげられないの。
どうして…みんな自分の好きな人には振り向いてもらえないのかな?」

響さんは優しくあたしの頬を両手で挟むと

伝う涙をそっと親指でふき取ってくれた。